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【城をとる話】司馬遼太郎

おれと銭ゲバ侍と巫女と商人で不落の城を「とる」話

戦国クライマックスである「関ヶ原の戦い徳川家康石田三成の策謀の日々、会津に移封された上杉景勝と東北領土の拡大を図る伊達政宗、正宗は東北の国境に不落の帝釈城を西国牢人である赤座刑部に築かせていたが、そこにこの城乗っ取っとたると上杉方、佐竹の臣、車藤左が銭好きの上杉臣、中条左内や堺商人、ウブで一途ではあるがひとくせある巫女おううを巻き込んだ痛快どたばた城取物語。

 

司馬遼太郎の作品の中でも、幻の名作と言われ、「城取り」という映画としても有名。製作は石原裕次郎。中村珠緒、松原智恵子、蘆屋雁之助、石立鉄男などそうそうたるメンツが出演している作品。

 

感動したシーンは、物語も後半、こんな手勢で、やはり城取り難しいとなり、生来の楽天家であるはずの藤左も絶望する。

(人生とは何であろう?)

(何のために生きている?)

陰鬱な想念にとりつかれる藤左。

計画を練り、崖をよじのぼり、谷をくだる

(なんのために?)

(おれは疲れているのかな。だからこんなことを思うのか?)

「疲れているときに物を思うべきではない」というのが藤左の少年からの信条だった。退嬰的になる。次第に自分が卑小になり、存在が無意味になり、絶望するしかなくなる。ものは白昼陽の照る下で思うべきものである。

 

 

このコロナ禍で心に響く。

命がけで日々、恐怖に耐えながら、自らのご家族をも犠牲にしながらお仕事されている医療従事者のかた、それに伴うお仕事をされておられる方々。それに比べて自分は・・・情けないな、とやはり思ってしまう。そう思うのも間違いではない。でも、思いつめてもしょうがない。「ないものはない」「できんものはできん」結局は、自分にできることでしか貢献はできない。それはもう極力、外出しないということでもいいと思うのだ。

などと思わさせてくれる良書です。


城をとる話 長編時代小説 (光文社文庫) [ 司馬遼太郎 ]